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熟成された芳醇なマリス・ヤンソンス&バイエルン放送響、来日

長期熟成ワインの飲み頃のように、熟成された飲み頃を感じる“美味しい”指揮者といえばマリス・ヤンソンスだろう。

2003年からドイツの名門・バイエルン放送交響楽団、2004年から3大オーケストラと言われるロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団首席指揮者に就任という、この上ないポストを兼任。

正直に言って、同世代の指揮者、例えば同い年のジェームズ・レヴァインが30代前半でメトロポリタン歌劇場の音楽監督となり活躍したのと比べると、実力派ながらいまいちポピュラーにならない印象が永らくあったが、その上の集大成に入る世代、その下のこれから円熟を迎える世代の間で、今、もっともバランス良く美味しい指揮者でしょう(というと何だか無礼な言い方に聞こえてしまうかもしれませんが、極めてリスペクトしています)。

名パートナーであるバイエルン放送交響楽団との公演へ行った(2014年11月25日@サントリーホール)。

大御所クリスチャン・ツィメルマンを迎えたブラームスのピアノ協奏曲第1番から始まるが、なんと風格のある演奏。巨人たちの名演だ。これだけ大物の組み合わせになると流石というか、共に引き立て合うというか、もちろんバイエルン放送響ならではの豊かな響きも相俟って、芳醇。最初の喩えと飲み物が違ってしまうが、永らく熟成されたウイスキーをいただくかのよう。ホール全体に満ちる温かく豊かな音が心地良い。ツィメルマンは(一部ミスタッチがあったことは驚いたが)変わらずの別格の高貴な演奏で、1楽章テンポプリモでの強靭で急き立てるような打鍵など度肝を抜かれる場面も(テンポプリモより速いと思われたが笑)。

あと、冒頭5小節目のティンパニのクレッシェンド&デクレッシェンドが前年に聴いたアンドリス・ネルソンスの演奏と酷似していて、その後も似た場面が多々。彼らが師弟であることを強く再認識。


後半は生誕150年で、このオケとも縁のあったリヒャルト・シュトラウスから『ドン・ファン』と『ばらの騎士組曲。これまたとんでもなく豊麗。『ドン・ファン』の高音から低音まで幅広くよどみなく響き渡る様は聴いているこちらの感覚も大きく広がっていくよう。特に木管の巧みで丁寧な歌い回しは聴き惚れた。弦に溶け込む様など気が遠くなるよう。

ちょっとたっぷり目に始まった『ばらの騎士』の優雅なこと。実演を聴くことができなかったカルロス・クライバーの舞台とはまた違うが、一生忘れ得ない演奏だった。

それにしても、良いコンビだなぁ。オケが完全に一つの楽器となり、思うように奏でられる。ヤンソンスロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団首席指揮者を2015年で退任するが、バイエルン放送交響楽団は引き続き首席指揮者を続ける。今後の名演も楽しみだ。

リヒャルト・シュトラウス:ドン・ファン/英雄の生涯

リヒャルト・シュトラウス:ドン・ファン/英雄の生涯