ミニマル四天王「テリー・ライリー」来日。純正律の気持ち良すぎる前衛

クラシック音楽の延長線上にある「現代音楽」(佐村河内さん事件で注目を集めましたね)。その試行錯誤の中で、広くテクノやロック好きからも支持され人気を誇る1ジャンルが「ミニマル・ミュージック」だ。


肥大し難解になっていったクラシックの主流に対し、小さな音楽単位を繰り返したり、引き伸ばしたり、ズラしたりすることで音楽が構成され、“四天王”と呼ばれるのが、ラ・モンテ・ヤング、テリー・ライリー、スティーブ・ライヒフィリップ・グラスの4人だ(世の中的には映画『ピアノ・レッスン』で話題となったマイケル・ナイマンが最も有名かもですが)。その中の一人、テリー・ライリーが9年ぶりに来日した。


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53個のメロディーの断片を各奏者が(楽器は何でもOK)、好きな回数繰り返す曲「in C」で衝撃を与えた革命児も今や79歳。これが最後の来日かもしれないと、生ける伝説を聴きに行った(2014年11月22日)。

今回は、寒川裕人さんという1989年生まれの若い日本人映像作家との共演。何でも寒川さんによる、被災後の福島をテーマにした作品にライリーが共感してのコラボレーションということで、会場はコンサートホールではなく、東雲にある、倉庫のようなスペース。縦長の空間の四方に映像が投影される中、前のステージにてライリーが即興演奏を繰り広げる。

前半は福島の自然を収めた動画とのコラボ。なのだが、僕はコンサートの際、オペラやバレエは別にして、しばしば目をつぶって聴くので、今回もあまり映像は見ず、音楽に集中していた。プリペアドピアノで演奏が始まる。これはピアノの弦にネジやゴムなどを挟み込むことで響きを変質させる、ジョン・ケージにより広く知られることになった特殊奏法で、かつての前衛というか、流石に古さを感じさせる。が、逆にそのレトロな感じが、ユートピアな音世界を夢見続ける永遠の冒険家のようでグッと来る。

ピアノは今のピアノの調律である平均律ではなく、純正律だ。平均律は正確にキレイに響かないが、転調が可能。純正律は響きが美しいが、その分、転調ができない。よって、一つの音列に基づき演奏される(ジャズのモード奏法のようなものだ)。で、これがとにかく美しい。ライリーの指は衰えを知らずよく動き、モーダルな即興は瞑想的でとにかく心地良い。


ライリーがライヒと違うのは、ライヒがリズムにしろ音程にしろ、意図的な管理されたズレであるのに対し、自然はフラクタルよりもファジーであるように、ライリーは偶然的にナチュラルなこと。H20という分子の集合=水が無限に形を変えていくように、自然に音楽が生まれ、変わっていく。目を閉じ、その美しい音のシャワーを浴び、浸る。

後半はシンセサイザーでの演奏。戦争の歴史的映像が1日7秒ほど1年分流されるという作品とコラボ(1年で終わらず3年繰り返されたが)。こちらもモーダルな耳に不快感の全くない即興が繰り広げられる。そして、、曲が、終わった? ライリー、動かない。また弾くのかな?と思うが、全く動かない。7分経過。ライリー、立ち上がり、去る(笑)。こんなに長い余韻も初めて(笑)。
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ということで、1999年の来日時に聴いた、箏などと行った「in just C」のまだまだ若くいきいきとした感じとは違ってしまったが、今回は唯一無二のじわじわ来る温かさを感じた。年は取っても、さすがテリー・ライリーという公演だった。

 

【テリー・ライリーのアルバム紹介】

・テリー・ライリーの代表作というだけでなく、20世紀の音楽の中でも極めて重要な作品である「in C」。

Terry Riley in C

Terry Riley in C

 

 

純正律の代表アルバムが、「The Harp of New Albion」。

Riley: The Harp of New Albion

Riley: The Harp of New Albion